LGBT法連合会「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」の成立についての声明への賛同を表明します

レインボーさいたまの会は本年6月19日に「一般社団法人 性的指向および性自認等により困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(略称:LGBT法連合会)」理事一同により発出された、以下の「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案の成立についての声明」に賛同いたします。

https://lgbtetc.jp/news/2878/

2023月 6月 19日

性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案の成立についての声明

一般社団法人 性的指向および性自認等により
困難を抱えている当事者等に対する法整備のための全国連合会(略称:LGBT法連合会)
理事一同
(団体 URL:https://lgbtetc.jp/)

2023年6月16日、参議院本会議において、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律案」が成立した。本法は、極めて異例の審議・修正の過程をたどり、短期間で法の内容が後退するものとなった。日本で初めて性的指向及びジェンダーアイデンティティについて位置づけた法律として、歴史的な意味を持つべき法律であるにもかかわらず、私たちが求めてきた差別禁止法とは大きく異なり、懸念を表明しなければならないものであることは極めて残念である。長年の運動の結果が、このような法律の制定であることは受け入れ難く、厳しい姿勢で臨まなければならない。また、今後、この法律については、取り組みの後退が懸念される部分、前進に活かし得る可能性のある部分の双方について、対応を早急に検討しなければならないであろう。

この法律は、「全ての国民が、その性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティを理由とする不当な差別はあってはならないものであるとの認識の下」理解増進の施策を進めるとの基本理念を掲げている。この理念に則り、国の基本計画の策定、省庁連絡会議の設置、学術研究の推進、毎年の白書の発行などが政府に義務付けられている。また、国、地方公共団体、事業主、学校は、基本理念に則った施策の実施に努めるものとされており、啓発や相談体制の整備その他の必要な措置を努力義務として課している。ただし理念法でありながら、「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」と、性的マイノリティ当事者の尊厳を踏み躙るかのような条文を設け、政府が具体的な指針を策定するものと規定している。

理解増進の名を冠しながらも、啓発等は努力義務に留まっており、国の体制整備を義務付ける法律と捉えるべきものである。ただ、国会答弁によれば、すべての施策は「全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする」こととなる。更に、指針が策定されることにより、現在、もしくは今後の地方自治体や教育現場の取り組みに対し、実質的な萎縮効果をもたらすことが懸念される。一部の勢力によって、さまざまな取り組みが「安心できないもの」であるとされ、停滞させられることのないよう、今後の基本計画や指針の策定経過はもとより、地方自治体や教育現場への、学術的に裏打ちされ、統計的な根拠を持った働きかけを強めなくてはならない。

本法律が日本で初めて性的指向及びジェンダーアイデンティティ(性自認)について位置づけた法律であるにもかかわらず、このような内容となったことに憤りを禁じ得ない。法律制定までの審議過程も含め、これが当然に導き出される経緯や法の内容ではないことは、強調しておきたい。当事者は、法律の制定に至る過程の中で、多くの傷つきと途方もない苦しみを味わうこととなったが、これを当然とせず、このような過程自体が社会的に問われるべきものであり、真摯に省みられるべきであることを指摘する。

今後、この法律が性的指向や性自認に関する取り組みを阻害する動きに使われることなく、真に基本理念に則った取り組みが進むよう、また差別を禁止する法制度が確立されるよう、歩みを止めることなく、多くの人々とともに連帯して運動を続けていく。

以上